グローバリゼーションと日本語学校

 グローバリゼーションという言葉には、いよいよ地球規模でさまざまな規制を取り払う時代に入るという期待を喚起させる響きがあります。われわれ日本語教育あるいは留学生受入れに携わっている人間にとっても、待ち望んだ時代の幕開けを感じさせます。これまで閉鎖的だった日本の外国人受入れの状況をよく知っている者としては、このところの規制緩和には隔世の感を禁じ得ません。しかし、その一方でそればかりではないと実感したニュースがつい先日、飛び込んできました。それは海外のある老舗語学学校が大きなチェーン校に買収されるという報せでした。特に競争の厳しい英語圏にあって今後の安定を選択したということでしょうが、決して小さな学校でもなく、しかもトップが人望の厚い人格者なだけに、単なる生き残り策と一言で片付けられないものを感じ、経営者としていろいろと考えさせられました。

 欧米圏の話ではありますが、決して他人事と言ってはいられません。その理由の一つは、まず、教育にも国際規格という考え方が入りつつあるという事実。「ISO 29990 非公式教育・訓練のための学習サービス サービス事業者向け基本的要求事項」というISOの新しい規格が昨年完成し、それに続き語学教育の規格作成が進行しています。もともと人の移動に対応した教育の質の担保がテーマですから、ボーダーレスの環境が整いつつある。つまり、もはや民間の教育市場は世界に開かれることが前提の時代に入ったと言えます。

 さらに、日本語学校の多くは世代交代の時期を迎えつつあります。うまく世代交代ができた学校はいいですが、創業者のカリスマが強ければ強いほど交代が難しいのは他の業種と同じです。実は海外の語学学校も、創業から20〜30年を迎える学校が多く、後継者が育たず閉校するとか、経営権を手放すという例をいくつも耳にします。すなわち、買収の好機だとも言えるのです。実際に、経営者が外国人に替わっているというケースも少なくなく、すでに日本語学校の集まりの一角を占めるほどになっています。それだけグローバル化は進行していますが、今後加速する可能性は大いにあります。

 もう一点。大手チェーン校の台頭が今後考えられます。日本語学校には、まだ大手チェーンと言えるほどの存在はありませんが、海外では大きなグループがいくつもあります。留学希望者の視点で見れば、確かに小さな民間の学校(ブティックスクールと呼ばれたりしています)に比べれば、何かあった時の補償などを考えると、大手校に軍配が上がるのも理解できます。こうした国際的なチェーン校が日本語教育に参入する日もそう遠くないかもしれません。いや、すでに入っているかも。入っていないとすると、喜ぶべきというよりは、すでに魅力がないとも考えられます。

 そう考えると、小規模な民間学校が450もひしめく日本語学校の状況が今後このまま推移するとは考えづらく、いずれ大手が現れ吸収合併が起こる。もしかしたら、それは海外のチェーン校の可能性もある。しかし、それが質の低下とは直結するとは言えない。むしろ、学習者の選択肢が広がることになるかもしれない。他人事のようですが、そんな未来像が浮かんできます。

 もし、なんとかこのまま生き残りたいと思うのであれば、まず業界を上げて日本留学の安全性の確立(=セーフティネットの構築等)と日本語学校の質保証を早急に実現させる必要があるでしょう。それでも大手外資参入を止めることはできないかもしれませんが、逆に大手も参入しないような魅力のない環境だとしたら、それこそ問題にすべきだ、とも言えます。

 いずれにせよ、内輪もめなんかしている場合じゃないのは、わが国会を見ても明らかです。ということで、転換期の日本語学校。さて、これからどうしますか。