カイのオンライン体制の経緯とプロセス
カイ日本語スクールは、2011年の東日本大震災を機に、オンライン授業環境整備の必要性を強く感じ、翌年から本格的に教育現場へのICT導入の研究を開始。様々な試行を経て、2015年秋、日本語学校では初めて、長期コースである総合コースの学生全員の一人一台iPad環境を実現しました。もともとオリジナル教材中心のカリキュラムだったことも幸いし、iPadに教科書・教材をMDM (Mobile Device Management) とLMS(Learning Management System) を通じて配信する形に切り替え、導入直後からiPadを活用した授業を開始することができました。タブレットやPCを導入しても実際は使いこなせない現場も多い中、早い段階から反転授業を取り入れたり、共同編集を使いモチベーションを上げる方法を開発するなど、現場教師の創意工夫もあり、学生たちの満足度を高く維持することに成功しています。
実施体制
ICTを現場に本格的に取り入れるため、2015年にKAI DLS(Digital Learning System)というチームを立ち上げ、エンジニアと専任教師が、多くのデバイスに対応できるネットワーク環境の整備、システム構築、コンテンツ開発を始めました。iPadを入れただけでは、現場は変わりません。オリジナル教材のデジタル化に始まり、iPad用の教材開発、映像教材作成、教師研修、学生サポート等、多くの作業を通し、1年をかけて軌道に載せました。
こうしたノウハウの積み重ねのおかげで、2020年春の新型コロナ感染拡大によるオンライン授業へのシフトの際にも、短い期間での移行を実現。さらに授業開始後は、同チームが全クラスのZoom授業サポート、教師や学生のトレーニングを行いつつ、技術的な不具合や接続問題などにも即時対応し、円滑な授業運営を支えています。
コンテンツ・教材開発
使用する学習コンテンツは全てオリジナル教材ですが、ICT化に当たり改めて著作権ヘルプデスクと契約し、専門的見地から教材を点検し、クリアしたものだけを利用しています。
デジタル用教材開発については、教材を単にPDFにしただけでは十分にデジタル環境を生かすことにはならないため、音声はもとより、ゲームやビデオを作成し、教科書に組み込むなどして、立体的に学べる教材を作成。今も、学生からのフィードバックを元に、さらに改善するよう開発を続けています。
教員研修
授業教材・コンテンツ制作に当たっては、ID(Instructional Design)という授業設計方法やその土台となる教育工学の理論を教師全員で学び、どのように効果的に、学習意欲を高めながら授業目標に到達するかを考えつつ、授業構築を行う力を身につけてきました。また、適宜、研修や基本的なマニュアルを作成し、出来る限りのサポートも行っています。
オンライン授業への移行後は、自発的な勉強会も立ち上がり、活発に事例交換や課題共有を行い、授業改善に取り組んでいます。
学習環境
学生には、iPadを最大限活用できるよう、以下のようなサービスを提供しています。
- WiFiネットワーク完備
- DLSサポート
- オンラインマニュアル
- クラウドでの教材提供
- オンライン図書館
研究活動実績
2014年以降、ICT関連の日本語教育開発について多くの研究を行ってきました。(以下、ICT関連の研究のみを抜粋)
2019
- 「日本語学校ICT化_やってみた」の次は?(トーキングショップ)
- 留学生のための就労準備プログラムのデザインーケース学習を取り入れた授業実践の報告(日本語学校教育研究大会)
2018
- 教師が自分で作るデジタル教材いろいろ
- 文書作成ソフトのクラウド機能を利用した機能語授業
2017
- 中級日本語学習者を対象とした反転授業の実践と評価(Castel/j国際会議発表)
- 反転授業を取り入れた初級文法授業のデザイン-話す練習を増やす取り組み
2016
- タブレット端末(iPad)学内全面導入実践報告ー大変だったこと・よかったことー
2015
- 研修・授業改善へのインストラクショナルデザインの適用 – 事例発表
2014
- 初級授業教材のデジタル化 〜iPhoneを使った遠隔操作〜(デモンストレーション)